A Night At The Village Vanguard
Sonny Rollins
「A Night At The Village Vanguard」を聴くと、ぼくはいつも薄暗い地下のジャズクラブを連想します。
ニューヨークの片隅、地下へと続く階段を降りていくと、狭いジャズクラブがあって、目つきの悪い人たちがなぞの煙を吐き出しながらステージを取り囲んでいる。彼らを見下ろす格好でハイになったソニー・ロリンズたちが、薄ら笑いを浮かべながら、とんでもなくカッコいいジャズを演っていく。
そんな情景が頭に浮かぶのです。ぜーんぶ、ぼくの勝手な想像ですけどね。
テナーサックスとベースとドラムの3人編成によるライブ盤。ピアノがいないぶん、ロリンズの男らしいぶっといテナーの音が際立ちます。
ドラムのエルビン・ジョーンズは、演奏中ずっと「うへっうへっ」と不気味な声を出しています。これがまた怖い。
しかし、ものすごく複雑でグルーヴィーな彼のドラミングは、文句なしにカッコいい。これはもう黒人にしか出せない、うねるようなグルーヴ感。
ベースのウィルバー・ウェアも曲者です。ぼくは2曲目「Softly As in a Morning Sunrise」でのウィルバー・ウェアのベースが、とても好きなんです。
こんなユニークなベース演奏、他では聴いたことない。
曲名の邦題は「朝日のようにさわやかに」ですが、ここでの演奏は、ぜんっぜんさわやかじゃない。むしろ間逆。それもまた面白いのです。
今はどこのお店もBGMにイージーリスニング的なジャズを流しているから、世間のジャズに対するイメージが「無害なBGM」になっているような気がします。
いやいやいや、無害だなんてとんでもない。
このアルバムを(できれば大きな音で)聴けば、ジャズをただのお洒落BGMだなんて、口が裂けても言えなくなるよ。
ちなみにジャケット写真の人はタモリではありません。ソニー・ロリンズです。
A Night At The Village Vanguard GXF3007(M)
- Sonny Rollins(ts)
- Wilbur Ware(b)
- Elvin Jones(ds)