Relaxin’ With The Miles Davis Quintet
Miles Davis
リラクシンは多分、ぼくがこれまでに一番再生した回数の多いレコードです。
全曲すばらしいけど、なんといっても1曲目の「If I Were A Bell」が良いのです。ぜひレコードかCDを買って繰り返し聴いてみてください。きっとジャズの楽しさ、素晴らしさがわかってくると思います。
そう、リラクシンは楽しい。カインド・オブ・ブルーの暗さ・重さとは対照的に、明るくて軽やか。初心者はカインド・オブ・ブルーを聴いたらダメですよ、ジャズが嫌いになるから。圧倒的に楽しいリラクシンを聴きましょう。
1曲目の「If I Were A Bell」は、最初の1音から最後の1音まで完璧で、この演奏の中にムダな音なんてひとつもないし、もちろん足りない音もない。小学校のチャイムのようなイントロを聴くたび、ぼくは心が踊ります。
この曲を最高にしているのは、ポール・チェンバースのよく歌うベースと、センスの良さをこれでもかと見せつけるレッド・ガーランドのピアノです。ぜひ、ベースとピアノの音に注目して聴いてみてください。
ぼくは「ウォーキングベースこそがジャズだ」と考えていて、この曲ではポール・チェンバースによる至高のウォーキングベースを堪能することができます。ちなみにウォーキングベースというのは、一定のリズムでボン、ボン、ボン、ボンと4ビートで鳴らすベースのことです。
そしてレッド・ガーランドのピアノがこの曲の(というかこのアルバムの)雰囲気を決定づけていて、マイルスのソロの途中に「ピン」と差し込んでくる、たったひとつの音に「この人はとてもセンスがいいなあ」と唸ってしまいます。00:44〜00:46でさらっと入れてくるレッド・ガーランドのアドリブなんて最高ですよね。
この時期の、ゴツゴツとしたジョン・コルトレーンの演奏も、ぼくは好きです。当時はヘタクソだと言われたそうですが、人とは違うやり方で「自分だけのオリジナルな音と演奏」を追及しているのがわかります。音楽は上手いとか下手とかじゃないんです。心に響くかどうかです。(世の中には音楽や歌を技術でしか評価できない哀れな人が多すぎる!)
静のマイルス、動のコルトレーン、この2人の対比が、リラクシンの大きな魅力のひとつになっています。リラクシンはジャズ初心者にうってつけのキャッチーなジャズアルバムだし、何度聴いても飽きない名盤です。
このアルバムが録音されたのは1955年、マイルスが30歳の時です。彼は死の直前、この時期に録音した演奏を「今でも誇りに思う」と言い残しています。その事実を知った時、ぼくはとてもうれしかったです。
【参考記事】“無名だった”1955年のマイルス・デイヴィスと、2回のセッションを収録した傑作『Relaxin’ With The Miles Davis Quintet』
Relaxin’ SMJ-6532(M)
- Miles Davis(tp)
- John Coltrane(ts)
- Red Garland(p)
- Paul Chambers(b)
- Philly Joe Jones(ds)