WALKIN’
Miles Davis
1曲目がかの有名なウォーキンです。え?テーマが古くさい?もっさり?
うん、たしかにそうかもしれません。でもここはぐっとこらえて、テーマの後につづく各人のソロに耳を傾けましょう。
そう、ジャズにとって大事なのはテーマではありません。テーマは前菜です。ジャズマンによるアドリブソロ演奏こそがメインディッシュなのです。
まずはマイルス・デイヴィスがソロをとります。この頃のマイルスはまだミュート奏法ではありません。マイルドで艶があって、とても良い音でトランペットを吹いています。ミュートもいいけれど、あれってこちらの体調によっては耳が痛いもんね。
パーシー・ヒースの堅実なウォーキングベースと、控えめなケニー・クラークのドラム、ちょうどいい味付けをしてくるホレス・シルヴァーのピアノ。いいですね。
ジェイ・ジェイ・ジョンソンのおおらかなソロのあとは、ラッキー・トンプソンがソロをとります。ちょっとだけリズムに遅れているようなねばっこいテナーです。
そのあとのホレス・シルヴァーのピアノよ。うーん、いい。
単純なメロディーをコンコンコンと弾いてるだけなんだけど、実にいいんです。この人のリーダーアルバムは正直あまりピンとこないけど、サイドにまわったときは抜群にいいのです。
2曲目の「BLUE N’BOOGIE 」もかっこいい。
終盤、ラッキー・トンプソンが見事なソロをとっている後ろで、マイルスたちがテーマを重ねてきます。そこでぼくはいつも「くーっ」となります。
そのあとでまた、ホレス・シルヴァーがやってくれます。鍵盤に汗を滴らせながら演奏するシルヴァーが見えます。
マイルスは後年、「演奏してるときはわからなかったけど、あとからレコードで聴いて、自分たちが凄い演奏をしていたことに気づいた」みたいなことを言っていました。
村上春樹さんは「いちばんかっこいいジャズのLPは、なんといってもMiles DavisのWALKINです。頭から尻尾までかっこいいです」と語っています。「いろいろ聴くよりウォーキンを100回聴いたほうがいい」とも言っていたような。うろ覚えですけど。
ということで、我々は素直にウォーキンを100回聴きましょう。ジャズの真髄が見えてくるかもしれませんから。
WALKIN' SMJ-6528 (M)
- Miles Davis(tp)
- Lucky Thompson(ts)
- J. J. Johnson(tb)
- Horace Silver(p)
- Percy Heath(b)
- Kenny Clarke(ds)